突然、こういう喩えが適切かどうか?それでも咄嗟に頭に浮かんだことを優先することにした。
他意はない、
ここはある意味ヌーディストクラブに似ているな!と思っただけの事である。
勿論、行ったことも経験もないが、ヌーディストクラブは参加する人たちが年齢も性別も関係なく定められた空間の中では真っ裸で過ごすと聞く。参加者は全員全裸でなければならない。、こんな場所で見る方も見られている訳で下卑た考えで参加する人たちはいない。
ところで、ここは全裸とは全く関係がない所である。
狭く急な階段を上ったところ、左手に誰か人の住む古いマンションの入り口かと思われる扉がある。上を見ると傘をかぶった裸電球の灯りが付いている。どっちの「まさか?」か半信半疑でノブを回して扉を開けるとさすがに、ここは「家」ではない空間があった。
少しの間、気持ちが引くほどの静けさである。気が付けばクラシックが流れていると判った。あまりに静かな空間ではクラシックでさえ音を失なう。 「ここは会話は出来ませんがよろしいでしょうか?」 突然マスターらしき人から押し殺したような声をかけられた。・・・「んん・・・・どうしよう?」 「ま~いーか!」の目配せでここを案内してくれたキッシーに同意!したことを示し中に入る。 こういうところでは「テーブル席」が当然無い!と判るのにまた、少しだけ時間がかかる。すべての席が外を向いている。そしてそこにずらーっと本が並んでいる。変わった図書館だと思えばいい!がメニューを出され水を出されして、「いやいやここは図書館ではない!」と思い直す。
暑い通りを歩いてきた身にはグラスが汗をかくほどのひやりとした水は本当に美味しい。人心地をとりもどしながら周りを眺める。四角い部屋の角々に静かに本を読む人がいる。それだけである。 部屋の真ん中は背の高いカウンターに囲まれたキッチン。 時折聞こえるのはそこからのグラスの触れ合う音だけ。明るい光に溢れる外を見ながら「京都は自転車に乗っている人が多いんだな・・」という心の中で言う感想も静か・・・。 店内というより室内。隣で本を読み始めたキッシーを横目で見ながら目の前の文庫本を一冊手にとって私も眺めることにした。たまたま目の前にあった本をわざわざ京都まで来て「読む!」という選択はあり得ない。それでも、作者は私の好きな山田太一さんの本。 眺めていると案の定すぐに眠くなった。静かでありさえすれば大丈夫だろうと、前のテーブルにうつぶせで寝ることにした。ここは図書館?のようなものだら・・・
歩き疲れた、立ち続けた足が少しの間に楽になった。タイミングよく水のお替りを持ってきてくれたマスターに「ストロボなし」の撮影が大丈夫か?を伺って店内を撮らせて頂いた。帰り際ひとつ気になっていたことを伺った。 「ここではスマホとかO.K!なんですか?」 「・・う~ン・・一応パソコンとかは遠慮して頂いています。」 「なら、やっぱりスマホとかはダメでしょ~」 唯一ここで話した会話らしきものを後に帰途に。帰りがけ電車の中で静かに静かに誰にも関心を持つこともなくひたすら画面に向かう人たちを見ながら あの喫茶店は「特別だったのか?普通なのか?」 「新しいのか?ふるいのか?」と考えた。
どちらにしても「京都はやっぱり面白い!」
HIRO